ホワイトペーパーA

外付けRTCモジュールによるシステム全体での消費電流の大幅な削減

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このホワイトペーパーのポイント

システムの消費電流削減のためには低消費電流のデバイスを用いることが有効ですが、さらにリアルタイムクロックモジュールの『繰り返しカウントダウンタイマ機能』や『時刻更新割り込み機能』などを用いてマイコンのスリープ/ウェイクアップを制御することで、時間軸での消費電流のコントロールを行いシステム全体の大幅な低消費電流化を図る事が出来ます。

 

a) タイミング
 b) センサー動作時の電流
 c) MCUの電流
 d) RTCモジュールの電流
 e) トータル電流

 

*saving = 節約された電流

 

 

 

 

 

 

 

(1) 概要
(2) 低消費電流 ≠ 低消費電流?
 (2.1) 低電圧での動作について
(3) LED, 低電流MCU, RTC, 低消費電流RTC の電流の比較
 (3.1) バッテリの種類・容量について
 (3.2) 動作時間について
(4) システム レベルでの低電力化の工夫
 (4.1) 2 つのセンサーが監視している例
 (4.2) 考慮すべき重要な点
(5) 動作レベルでの調整
(6) 重要な要素の選択: RTC モジュール
(7) 結論

 

(英語原本)Achieving lowest power consumption on system level( 2021-01 Rev.1.1E)/ Microcrystal

 

1.  概要

 

  IoT(Internet of things) によって豊富な新しいアプリケーションが広がり、モニタリングや制御する機能がさらに多く必要とされています。 多くの場合、機能が増えると消費電力も増加してしまいます。 必要とする電力を体系的に見ると、各機能ブロック毎では動作時には各々の最大電流を必要とします。しかし幸いなことに全ての機能を常に最大のパフォーマンスで動作させる必要はありません。省電力設計の目標はその都度不要なものを全てオフにすることになります
そのためには各機能にウェイクアップ信号を送るため常時オンになっているデバイスは非常に低消費電流である必要があります。リアルタイムクロック (RTC) はいずれにしても時刻保持のため常時オンである必要があるため、これを活用することをご提案します。最新のRTCモジュールは非常に低消費電流(50nA〜240nATyp.)で動作します。RTCモジュールには時刻情報の保持以外にも定期的に割り込み信号を出力してマイコンをウェイクアップさせる機能があります。それにより多くの場合でシステム全体での消費電流を90%以上削減することが出来ます

 

このホワイトペーパーではアプリケーションで追加で電流が流れる可能性があるポイントの特定に加えて、影響を軽減するための対策も提案します。

 

2.  低消費電流 ≠ 低消費電流? 本当の『低消費電流』とは?

 

 今日、多くのデバイスは低消費電力 (Low Power =LP) をうたっています。
 それにより次世代のアプリケーションは消費電力が少しばかり減少しています。
 しかし実際問題としては、消費電流はバッテリー容量に対して十分に少ない値である必要があります。
『外付けのRTCモジュール』を活用して消費電流の多いデバイスの稼働時間を制御して全体の電流値を抑えることで
 本当の『低消費電流化』になります。

2.1 低電圧での動作について 

IoT 関連のウェアラブル、ポータブル、および多くのアプリケーションは、最小限の消費電流にすることが必須となっています。
電力を消費するデバイスのほとんどが抵抗特性を持っているため、低電圧動作は有効です。
動作電圧を5V→3V (1.5分の1)に下げると消費電流は約半分になります。
そして消費電力を最小限に抑えるための回路を選択して最適化する必要があります。

 

3.  LED・ 低電流MCU・MCU内蔵のRTC・外付け低消費電流RTC の消費電流の比較

 

 下の(表1)はPCB基板上での各デバイスの消費電流の比較した例です。

コンポーネント 消費電流 Duty 平均電流 備考
 a) LED 10mA 20% 2000μA 高効率LED
 b) 低電流MCU 3mA 10% 300μA 主機能が動作時
 c) MCU スリープモード時 50μA 50% 25μA スリープモード時
 d) MCU"内蔵" の RTCのみの動作 2μA 100% 2μA RTCは常時動作

 e) 外付けのRTCモジュール
  RV-8263-C7

190nA 100% 0.19μA RTCは常時動作

 e)' 外付けのRTCモジュール
 RV-3028-C7

45nA 100% 0.045μA RTCは常時動作
(表1)ワイヤレスセンサーノードにおけるキーとなるコンポーネント

e), e)' は Microcrystal のRTCモジュール です。

3.1 バッテリの種類・容量について 

一般に電池容量の大きい『一次バッテリー』 と 容量の小さい『バックアップバッテリー』が併用されます。

●一次バッテリ−にはリチウムイオン電池 (または リチウムイオン電池パック ) が非常に多く利用されています。
 -供給電圧が 4.2 〜 3.9 V と比較的高く、機能にピーク電力を供給するのに理想的です。
 -体積あたりの容量が大きく、重量あたりの容量も大きい
 -高い充放電サイクル
 -数1000 mAhなどさまざまな容量で提供されます。

バックアップバッテリーを使用すると、バックアップデバイスを常に稼働させることができます。
 キーとなるパラメータは次のとおりです。
 -漏れが少なく自己放電が少ない
 -低消費電流RTCモジュールやメモリ機能への給電に最適(時刻情報の保持、メモリ値の保持用途)
バックアップバッテリーとしてはコイン型電池が多く使用されています。
 ( Li2032, CR2032など)
 -小型: Ø 20 mm、厚さ 3.2 mm
 -定電源電圧: 3.0 V
 -容量: 225 mAh
 -低コスト: 数量ボリュームで数十円
 -多数のサプライヤー: Renata、Duracell、Varta など。
 -入手性が良い

 

 ※ バックアップの要求(持ち時間)応じて、充電型の2次リチウム電池、電気二重層コンデンサも使用されます。
  また今後は全固体電池の使用も増えると考えられます。

 

3.2 動作時間について 

・以下の例で時系列での消費電流を考察します。

アプリケーション例:)無線遠隔監視モジュール
動作:)センサーを一定間隔で常にチェック。制御システム(ローカル)で変化量の修正が行われ大きな偏差が発生した場合には値が基地局に送信される。

( 図1:デバイス構成の違いによる消費電流の違い )
( 左:マイコン内蔵のRTCを使用/ 右:外付け低電流RTCを使用 )

 a) タイミング
 b) センサー動作時の電流
 c) MCUの電流
 d) RTCモジュールの電流
 e) トータル電流

 

 

*saving = 節約された電流

● 構成例(Implementation) A:マイコン内蔵のRTCを使用
a) 通常のケースでは、アクションはランダムな時点で発生します。
b)センサーの動作時は、最大量の電流を消費しています。
c) MCU は、必要なアクションをキャッチするのに間に合うように常に動作しています。
d) MCU "内蔵"の RTC により、アクションにタイムスタンプを付けることができます。
e) 全体の消費電流はこのようになります。

● 構成例(Implementation) B:外付けの低消費電流RTCモジュールを使用
c') 外付けの低電流RTCによりMCUは周期的にのみオンになり、何らかのアクションが必要かどうかをサンプリングします。
c'') それによりMCUの消費電流を極力削減することが出来ます。
f) 実際には動作時間は非常に短い時間である可能性が高く、大部分の電流が節約されます。

 

4.  システム レベルでの低電力化の工夫

 

 設計段階の早い段階で配電のアーキテクチャを検討することはとても有効です。 さまざまな機能ブロックを完全にオフにできるように、供給ラインを配線する必要があります。

4.1.  2 つのセンサーが監視しているプロセスの一般的な例 :
   温度センサ (センサー #1) と 水位 (センサー #2) の組み合わせ 

例えば以下のように必要なタイミングのみセンサを動作させることで消費電流を削減出来ます。

 

a)
全てのセンサーが常に作動している状態が理想ですが、必ずしもその必要は無い場合もあります。個々のブロックを詳しく見てみると、消費電力を削減できる可能性があります。例えば各サンプリング間の時間間隔を伸ばすだけでも電流が削減されます。
b)
センサー #1: 温度が 55°C 未満の場合には1 分間に1 回だけ読み取る必要があるが、55°C を超える場合にのみ 10 秒間隔にするなどサンプリング間隔を最適化します。
c)
センサー #2: 水位は急速に変化しないため、15 分ごとにチェックするだけで十分です。
d)
通信 : モジュールは 1日に 1回のみ決められた時間に通信するか、パラメータが限界を超えた場合に直ちに警告情報を送信させます。

 

4.2. 考慮すべき重要なポイント 

基板上の電源をオフにした後、漏れ電流に関してすべてのラインをチェックします。 標準的な FETスイッチは 数 µA のオーダーで容易にリークする可能性があります。 オープンドレイン構成の通信回線も無駄な電流の潜在的な発生源です。プルアップがコントローラの電源に接続されていることを確認してください。 電源の切り替えに使用されるダイオードは低リークのショットキー タイプでなければなりません。また基板テスト用のクロック周波数出力をオフにして消費電力を最小限に抑えるように構成する必要があります。

 

 

5.  動作レベルでの調整

 

 システムの消費電力が最小になるのは、次の場合です。
 ◎ 一つの超低消費電流のデバイス(RTCモジュール)のみが常にオンとなり、時刻情報を保持し一定間隔でのウェイクアップを制御する
 ◎ その他の動作ブロックは通常時は全てオフに
 ◎ ブロックをオフにできない場合は、ブロックをスリープまたは最低電力のアイドリング モードにする必要があります。
そうすることで多くのケースで 稼働時間の95%以上で電源が供給されている回路はRTCモジュールだけになります。
(図2:RTCモジュールを接続した場合の動作モデル)

機能動作時の電流
待機時の電流
*RTCモジュールは一次リチウムコイン電池 (CR2032)でバックアップ動作し、一定間隔でMCUやバッテリスイッチに割り込み信号を出力します。

 

6.  重要な要素の選択: RTC モジュール

 

 『 XTAL内蔵のRTCモジュール 』は、特にIoTや低消費電流が重要な用途で使用される場合により優れています。

◎時刻精度の向上:
XTAL内蔵のRTCの内部振動子は発振器と一体化した後にトリミングされるため、精度が向上します。
◎小型化:
基板専有面積は標準パッケージのXTALと同サイズの3.2×1.5mmになります。
◎ノイズや汚染に対する耐性の強化:
XTALの端子は気密封止されたRTCモジュール内部にあるため、湿気や汚染粉塵などの過酷な環境条件の耐久性があります。XTALとRTC回路が近接しているため、スプリアス信号結合の影響を受けにくくなっています。
◎温度補償機能:
パッケージの設計により優れた温度補償機能が保証されます(温度補償タイプ の場合)。この動作はクォーツの放物線温度特性を正確に補正するための技術です。 -40〜85°C までの動作温度範囲で『2 秒/週 』未満に相当する±3ppm の公差が期待できます。
◎機能の追加:
タイムスタンプバックアップ電源自動切り替えなどの追加機能も利用できます。
◎ウォッチドッグタイマ:
スタンドアロンの RTC モジュールは完全に独立したウォッチドッグとして機能し、実行中にソフトウェアを監視できます。
◎AEC-Q200 認証:
スタンドアロンの RTC モジュールと機能は、システム設計の信頼性を高める AEC-Q200 認定で利用できます。

表2. RTCモジュールの各機種の特性
型番 パッケージ 動作電圧 消費電流* 温度補償 電源切替え タイムスタンプ
 I2Cインターフェース
RV-3028-C7 3.2*1.5 +1.1〜+5.5V 50nA〜115nA * -
RV-3032-C7 3.2*1.5 +1.3〜+5.5V 160nA〜230nA *
RV-8803-C7 3.2*1.5 +1.5〜+5.5V 240nA -
RV-8263-C7 3.2*1.5 +0.9〜+5.5V 190nA - - -
RV-3129-C3 3.7*2.5 +1.3〜+5.5V 800nA -
RV-4162-C7 3.2*1.5 +1.0〜+4.4V 350nA - - -
 SPIインターフェース
RV-8063-C7 3.2*1.5 +0.9〜+5.5V 190nA - - -
RV-2123-C7 5.0*3.2 +1.1〜+5.5V 110nA - - -
RV-3149-C3 3.7*2.5 +1.3〜+5.5V 800nA -

*消費電流値は +3V@+25℃ でのTypcal値。
 『RV-3028-C7』及び『RV-3032-C7』はバックアップ電源切替モードの設定により Typcal値が変わって来ます。

 

 

7.  まとめ

 

 特別なタスクを実行するためにごく短い時間だけMCUの高い計算能力を必要とするアプリケーションは多くあります。そのタスク実行後はMCUはアイドリング モードに戻ることができます。さらにウェイクアップをスケジュール通り実行するため専用の低消費電流の RTCモジュールを追加すると消費電力がより最小限に抑えられます。
以下の <表3> と<図3> に示すように、マイクロコントローラを低消費電力 RTC モジュールと組み合わせるとシステム性能が向上することが分かります。

◎ 消費電流量を最小に
◎ バックアップ電源のコストを節約(さらに小型化)
◎ 追加部品無しのバックアップ電源自動切替機能(トリクルチャージ機能付き)
◎ 最高の正確な時間 (温度補償され、XTALを組み込まれた工場で校正された RTC)
◎ スタンドアロンのウォッチドッグ機能

(表3)『MCU内蔵RTC』使用時と『外付けRTCモジュール』使用時の消費電流の比較

 動作状態

動作時間
(ms)

動作間隔
(1時間
当たり)

一日当りの
動作時間
(s)
・・・(1)

消費電流
(μA)

消費電流
(A)
・・・(2)

アンペア
秒/1日
(As/day)
(1)×(2)

 システム動作
モード
(主機能が動作)

4 60 5.76 100,000 0.1 0.576

 MCU
アイドリング
モード
 ( MCU内部
RTCが動作 )

アイドリング
時間

86394.24 50 0.00005 4.32

 MCU
スリープ
モード
 ( 外部RTC
が動作 )

スリーピング
時間

86394.24 0.5 0.0000005 0.043

(図3:MCU内蔵RTC場合と 外付けRTC との消費電流での比較グラフ)

 

 

 

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